フジモリの脳内ラビリンス

〜a labyrinth in fujimori's brain〜

Fourty-ninth bookshelf
西澤保彦『転・送・密・室』



フジモリ 「今回の感想は「神麻嗣子の超能力事件簿」シリーズの第4弾、「転・送・密・室」をお送りします」

御影 「今回も短編集やな」

フジモリ 「雑誌「メフィスト」に掲載されたもの+書き下ろしだね。書き下ろしの作品はあいかわらずの伏線三昧。今回は「リモート・ダブル(自己幻影)」、「タイム・イレイザー(時空移動)」、「予知夢」、「テレキネシス(物体移動)」、「ディスガイズ(変装)」など、様々な超能力が用いられ、「不可能犯罪」が構成されている。それをおなじみのメンバ、チョーモンイン見習の神麻嗣子、ミステリ作家の保科匡緒、警部の能解匡緒の3人が解いていっている、というストーリィだ」

御影 「今回は登場人物もかなり増えたやんな」

フジモリ 「そうだね。保科の元妻、遅塚聡子や、能解の後輩百百太郎、謎の編集者阿呆梨稀、神麻のトレーナ神余響子などが登場している。特に阿呆は今後の大筋に絡んできそうな要チェック人物だ」

御影 「そやな。超能力を用いた短編ミステリィとして楽しんでもええけど、大きな流れとして保科・能解VS奈蔵というストーリィもあるもんなぁ」

フジモリ 「最後の作品、「神麻嗣子的日常」でストーリィが大きく動き出した。次への大きな「ひき」になったね」

御影 「せやけど、今回もそうやけど、よう、こんだけネタがあるなぁ」

フジモリ 「西澤保彦作品は「神麻嗣子の超能力事件簿」シリーズに代表される「超能力ミステリィ」と「人格転移の殺人」などに代表される「超機械ミステリィ」がある。もちろん、「チック&タカチ」シリーズのような純粋なミステリィもあるけど、今回読んだ作品のような「ルールド・ミステリ」にこそその真価が発揮されているんじゃないか、と個人的には思っている」

御影 「ルールド・ミステリ?」

フジモリ 「ごめんごめん、これはフジモリ(とアイヨシ)の造語だった。えーっと、「ルールド・ミステリ」とは、「ある規則によって構成されている世界におけるミステリィで、多くはその規則がトリックの鍵を握っている推理小説」のことをカテゴライズした言い方だ(英語上は間違った使い方で、正しくは「ミステリ・アコーディング・トゥ・ア・ルール」なんだけど、便宜上「ルールド・ミステリ(罫線上の推理小説)」と呼びます)。山口雅也の「生ける屍の死」や新城カズマの「屍天使学院は水没せり」、あとは城平京の「名探偵に薔薇を」なんかもそうかな。SFとミステリの融合による、非常に挑戦的なミステリィだね。新城カズマは「変格ミステリ」なんて言ってるけど」

御影 「ソード・ワールドの世界を舞台にした「迷探偵デュダ」シリーズや上遠野浩平の「七海連合シリーズ」もそうやな」

フジモリ 「(後者はともかく、前者はかなりマニアックだな・・・)うーん。あれはどちらかというと「ファンタジィ」だからねぇ。やはり、「世界(あるいは設定)が架空のものとしてしっかり構築されていること」「ミステリ(謎解きなど)部分において矛盾がないこと」が「ルールド・ミステリ」の条件だと思ってる。単純に「ファンタジィの世界、あるいはSFの世界」を舞台にしたミステリはこれに当てはめると厳しくなるね。その点、西澤保彦はうまく書いていると思うよ」

御影 「世界設定についてくどいぐらい説明しとぉけど、その設定に忠実にミステリを書いとぉもんな」

フジモリ 「既存のミステリィの枠をさらに超えたミステリィだね。謎解きの部分で唸らされることが多いよ」

御影 「・・・「ジョジョの奇妙な冒険」(第3部以降)なんかどない?」

フジモリ 「うーん。まあ、たしかに、あれも観方を変えれば「ルールド・ミステリ」かなぁ。「スタンド」という規則に沿って「敵を倒す」という「トリック(謎解き)」部分がある。「スレイヤーズ!」「ブギーポップは笑わない」など、「怒りと友情パワーで勝つのではなく、それまでの設定に沿った勝ち方をする」というファンタジィに大きく影響を与えた偉大なマンガだからね。まあ、あのマンガはミステリじゃないけど」

御影 「あ」

フジモリ 「なに?」

御影 「「ロマンホラー・真紅の秘伝説」ってなんなんやろね?」

フジモリ 「ジョジョネタに話を持ってくなぁっ!話を戻すと、「ルールド・ミステリ」として、西澤保彦のこのシリーズは非常に良く出来ている。一見、神麻嗣子を中心としたキャラクタ主導ミステリィに見えるけど、設定その他よく練られている良質のミステリィだ。ミステリ初心者から上級者まで楽しめる、面白い本だと思うよ」

御影 「しっかし、今回のラスト、どういうことなんやろなぁ?」

フジモリ 「これについてはいろいろな専門サイトで検証されているんで詳しくは書かないけど、ここまでの事実として

・チョーモンインはこの時空の人間ではない
・チョーモンインの名前はコードネーム(偽名)である
・神余響子の母は響子のことを「寿美子」と呼んでいる
・保科・能解の子供には「寿美子」と名づけたい、と能解は言っている
・保科・能解がいなくなったあと、二人の子供は遅塚に預けられた
・奈蔵渉という能解の部下が能解を殺そうとしている
・実際、二人の敵になるのは奈蔵の子供だ(作者談)
・保科・能解は神麻になにかしらの「絆」を感じている
・神余と神麻は姿かたち・性格は違うが、同一人物だと間違われる

というのがある。このことから、保科・能解の子供が神余であるということ、また神余と神麻が同一人物ではないか?という類推がされる。
ここからフジモリが推測するに、保科と能解の子供である寿美子は奈蔵の魔の手から逃れている保科・能解から遅塚に預けられ、未来の寿美子が神余としてチョーモンインとなる。また、神麻も寿美子である、と考えられるね。あとは、阿呆が奈蔵の子供なのか、百百は敵になるのかなど、これからの作品に注目する部分はある。いずれにせよ、今後の展開が注目されるね。ミステリィ部分はもちろんしっかりしているけど、ストーリィ部分も楽しめる、一粒で二度おいしい小説だった、というのが今回の感想だね。ああ、はやく次の巻が出てほしいよ」


御影 「「ルールド・ミステリ」とはちょっとちゃうけど、この「脳内ラビリンス・書棚の階層」もある規則に従ってるって知っとった?」

フジモリ 「規則?進行が会話調ですすめられていることか?」

御影 「ブー」

フジモリ 「・・・規則ねぇ。なんなんだ、それ?」

御影 「正解は、「話の最後にオチをつけなければならない」という規則でした!」

フジモリ 「規則だったんかいっ!!」



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