フジモリの脳内ラビリンス

〜a labyrinth in fujimori's brain〜

Fourty-sixth bookshelf(ネタバレ感想)
森博嗣『恋恋蓮歩の演習』


註!
今回の書評には内容に関するネタバレがあります。未読の方はご注意ください。


フジモリ 「♪ルパンるぱぁ〜ん!」

御影 「いきなりなんやねん!しかもそれ、「♪ルパン・ザ・サード!」やろが!しょっぱなから意味不明のボケすなぁっ!!」

フジモリ 「・・・さて、今回の感想は森博嗣の「恋恋蓮歩の演習」です」

御影 「うちの突っ込みは無視かいっ!」

フジモリ 「まあまあ、伏線だって。この作品は「瀬在丸紅子と阿漕荘の愉快な仲間たち」でおくるVシリーズと呼ばれるシリーズの6話目。しかもシリーズのメンバーが総出演するなんとも豪華な内容です。さて、御影、粗筋を」

御影 「(何が伏線なんや?)えーっと、

 世界一周中の豪華客船ヒミコ号。乗客の持ち込んだ、天才画家・関根朔太の自画像を盗み出すのが怪盗に課せられた今回の任務であった。許された時間は那古野から宮崎までの一日半だけ。なぜか小鳥遊練無たちも無賃乗船したまま航海は続いたが、突然の銃声の後、男性客の消失事件が発生。楽しい旅行は意外な方向へ・・・。

 ゆぅ内容や」

フジモリ 「今回は裏表紙からそのまま掲載しました。と、いうのも、森博嗣のミステリィってちょっとしたことがネタバレになってしまうからね。実際、この粗筋もうまいこと書いてあるよ」

御影 「ほな、今回もネタバレ無しの感想?」

フジモリ 「いや。今回はあまりに面白かったんで、ネタバレありの感想でいく。久々だね。リミッター解除ってとこかな」

御影 「ヒダのリミッターが外れた!」

フジモリ 「「修羅の門」ネタを出すなぁっ!誰もわからんて!」

御影 「わかるやろ、たぶん。で、ネタバレ感想するぐらいだから、おもろかったんやろ?」

フジモリ 「面白かった。めちゃめちゃ面白かった。もう、Vシリーズ最高傑作と言っても過言ではないね。今までのVシリーズ、特に「黒猫の三角」〜「夢・出逢い・魔性」ぐらいまではキャラクタの顔見せを兼ねているのか、様子見的な作品だったけど、前作「魔剣天翔」からキャラクタの掘り下げが始まり、人間ドラマ的な要素も加わって非常に盛り上がってきた。それで、今作の「恋恋蓮歩の演習」につながるわけだ」

御影 「今回の主役は「怪盗」保呂草やんね」

フジモリ 「そう。今回の主役はなんと行っても美術品専門泥棒、保呂草潤平だ。裏表紙で「怪盗」とぼかしてあったのはVシリーズを読んでいない人が手にとったときに保呂草が泥棒であることを知らせないようにとの配慮だろうね」

御影 「で、彼の今回のターゲットが天才画家・関根朔太の自画像。「魔剣天翔」にも出てきた設定が今回も出てくるわけやね」

フジモリ 「うむ。つまり、前作と有機的なつながりがあるわけだ。今作で保呂草が名画を盗む手口が非常にかっこいい。見所の一つだね。緻密な計画、周到な前準備、そして最善の逃走(搬送)経路。まさしく、怪盗と呼ぶのにふさわしい!」

御影 「(ぽん、と手を叩く)ああ、だから「♪ルパン・ザ・サード!」が出てきたわけやね!」

フジモリ 「まあ、性格にはジッチャンの「怪盗紳士」アルセーヌ・ルパンの方だけどね。変装の名人で、金品財宝を巧みに奪うが人殺しはしない。女性に優しく、恋愛もする。まさしく、保呂草は森博嗣版「怪盗ルパン」だね」

御影 「(ダミ声で)るぱぁ〜ん!!たぁ〜いほだぁ〜!!」

フジモリ 「だからそれはルパン三世だって。まあ、銭形のとっつぁん(祖父江)はいるけどね」

御影 「確かに、共通点は多いなぁ。変装もするし」

フジモリ 「今回はこの「変装」が鍵になるね。保呂草は、作中で3役を演じるわけだ。「羽村」「山下」、そして「保呂草」」

御影 「保呂草?」

フジモリ 「フジモリは、この保呂草って偽名なんじゃないかと思ってる。怪盗は、ひとところに定住しないものだ。たぶんシリーズの最後では、保呂草っていなくなっちゃんじゃないかな?」

御影 「そうなんかな?」

フジモリ 「紅子や林、祖父江など保呂草の正体がわかっている人間が多いし、やりづらいだろうね。今回の事件だって、紅子は気がついていたし」

御影 「そやね。それに、羽村の正体やってわかっとったんちゃうん?」

フジモリ 「だと思うよ。だって、読者(フジモリ)だってうすうす感づくぐらいだもの。たぶん、紅子は、「羽村」が「保呂草」であることを知っていただろう。しかし、それを他の人にはもちろん、保呂草にも言わなかった。それは知らなかったのと同じことだ。現象が表面に現れていない限り、その現象は「ない」ことと同じなんだと思うよ」

御影 「それ、なんかの受け売り?」

フジモリ 「いーや。フジモリが今回感じたこと。まあ、今後、シリーズが進むにつれて、保呂草が周りとどう共存していくのか、はたまた袂を分かつのか、注目すべき点だね」

御影 「しっかし、最後、自画像を関根朔太に返すところはかっこよかったなぁ」

フジモリ 「うむ。「魔剣天翔」で関根朔太のエピソードが語られていたことがここで生きてくるわけだが、じつにかっこよかった。「もと全然とってないって!いくら赤字だ?」って突っ込みはこの際おいといて(笑)」

御影 「「ギャラリーフェイク」のフジタと一緒やな(笑)」

フジモリ 「マニアックなネタはやめい。そして、今回は人間関係にも大きく変化があった回だね。ラブコメな展開を求めるファンも大満足だ」

御影 「練無が「日曜は遅く起きることにした、云々」というくだりは、たぶん前作「魔剣天翔」での失恋について描いているんやろな」

フジモリ 「だね。そして、保呂草と紫子とのキスシーン。はじめは、「ほんとに保呂草はキスしたんかなぁ?」とか思ったけど、大笛といい関係になったところから見ても「目的のためならしそうだなぁ」と思った。そのへんも、怪盗ルパンだね」

御影 「紅子が紫子に「保呂草はやめとけ」ゆぅくだりもあったしね」

フジモリ 「たぶん、紅子は保呂草のことは好きではないでしょう。あのキス(「人形式モナリザ」の回ね)は、彼女の一部分の人格が保呂草を「認めた」だけじゃないかな。ま、保呂草も紅子さんを好きではないと思うし、微妙な人間関係だね」

御影 「そういや、今作、前作と犯人は女性やね。S&Mシリーズの某作品(未読の方の為に伏せておきます)もそうやけど、自立し芯がしっかりしとぉ女性を犯人にするところなんか結構似とぉよね」

フジモリ 「そうかもね。まあ、森作品に出てくる主要な登場人物ってだいたいが芯がしっかりしてるけど」

御影 「そっか。・・・で、感想やけど、どやったん?」

フジモリ 「うん。ミステリィ部分もしっかりしていて、文句なしのできだ。フジモリの思考をトレースすると、読み始めの頃は羽村=保呂草かなと思ってた」

御影 「しゃべり方とか考え方が似とったしな」

フジモリ 「そう。で、話が進むに連れて、「あれ?違うかな」と思って。で、背表紙の粗筋で「怪盗」と書かれていたので、次にフジモリは羽村怜人が「怪盗」で、自画像を盗んだと推理したんだ」

御影 「保呂草≠羽村=怪盗と思ったわけやね」

フジモリ 「そう、その通り。保呂草以外の怪盗がいる、と。で、それら推理は半分間違いで、半分当たってたわけだ。最後の最後で結局「保呂草=羽村=怪盗」ということを知り、どんでん返しをくらったわけだ」

御影 「いいように森博嗣の術中にはまったわけやね(笑)」

フジモリ 「ミステリィのカタルシスとして、「読者に心地よい裏切り」を与えることというものがあるけど、まさしく今回はそれに該当するね。トリックでも、それ以外の部分でも、見事に騙された。ラブコメあり、アクションあり、トリックありで、非常に楽しめる一冊だった。もう、大満足だね」

御影 「Vシリーズも、いよいよ本番ゆうところやな」

フジモリ 「その通り。だからこそ、今作「恋恋蓮歩の演習」はVシリーズのギアが一段加速した、「最高傑作」だと断言できるよ。いやあ、ほんと、次回が楽しみな作品だったよ」


御影 「いやあ、それにしてもやっぱ保呂草はかっこええね。苦労して盗んだ作品をあっさりと渡してしまう。ハードボイルドやわぁ。決め台詞の「良い絵だったな」なんか、もう、めっちゃしびれるわぁ〜〜!!」

フジモリ 「ほんとだね。さっきも言ったけど、それまでの投資を無にして、作品をあるべき場所に返すってのは普通の泥棒にはできない芸当だよ」

御影 「そやね。実際、今回は保呂草は盗んでないのと一緒やもん」

フジモリ 「・・・いや、盗んでいったよ」

御影 「??、何を?」

フジモリ 「(ダミ声で)あなたの、心をね」

御影 「「カリオストロ」オチかいっ!!!」



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