| フジモリの脳内ラビリンス
〜a labyrinth in fujimori's brain〜 Fourty-third bookshelf 森博嗣『臨機応答・変問自在』 |
フジモリ 「今回は、森博嗣の「臨機応答・変問自在」の感想をお送りします」 御影 「集英社新書?これ、ミステリィちゃうの?」 フジモリ 「今作はミステリィではない。ミステリィ作家の森博嗣ではなく、「N大工学部助教授」森博嗣という色が強い本だ。以前読んだ、「工学部・水柿助教授の日常」が一番近いかな」 御影 「ふうん。で、どんな内容なん?」 フジモリ 「森助教授は大学の講義において、生徒に質問を書かせた紙を出席代わりに受け取る。それを次回の授業で回答し、プリントしているんだそうだ。この本は、今までの講義のなかで森助教授に寄せられた様々な質問と、それに対する回答を一問一答方式で収めている」 御影 「変わったセンセやなぁ。せやけど、毎回毎回質問を集めるゆーたら、かなりの量になるやろ?」 フジモリ 「まあね。一回の授業あたり質問が約50件。これを毎週回答しているので、今までの質問数は 3万件以上にものぼっているそうだよ」 御影 「3万件!?」 フジモリ 「それら一つ一つに森助教授がばっさばっさと回答している。簡潔に回答することを心がけているようで、 Q.電話はどうして声が聞こえるのですか? A.聞こえるのは人間。ここは子供相談室ですか?本気で疑問に思っているなら調べましょう。(p47) など、身も蓋もないあっさりした問答もあるけど、はしがきで森助教授が「重要なのは答えることではない、問うことである」と言ってるように、質問自体を読むことも面白いし、それに一刀両断で答える森助教授の回答もおもしろい。理系の授業だけあって理系の質問が多いけど、 Q.金属は何故伸びるのですか? A.良い質問ですね。これは分子の欠陥の存在によるといわれている。欠陥のない材料は強いが、伸びずにちぎれやすい。(p154) などと雑学的なものもあり、勉強になるのも事実だ」 御影 「(ページをぱらぱらとめくる)なんか、S&Mシリーズの犀川助教授を彷彿とさせるところがあるなぁ」 フジモリ 「だね。ま、それに問答のなかにも、 Q.先生、生きてて何になるんですか? A.それを知るために生きています。何にもならないことを認識するのが学問かもしれない。数学は数学の中で足りているわけで、何の役に立つのかと問うことは大切だが、役に立たないことで、自身や学問を否定することは人間の存在を否定することに等しい。(p104) などとS&Mシリーズで見られたやりとりを髣髴とさせる問答もある。ミステリィ作家である森博嗣の素の部分がわかる、ファンブックのようなものだ。森作品が好きな人なら読んで損はないけど、森作品を読んだ事がない人、あまり好きではない人にはお勧めできないかなぁ」 御影 「そんな人はこの本読まんやろ」 フジモリ 「い、いや、確かにそうなんだが、森博嗣の本だからミステリィだと思って買ってしまう人もいるかもしれないだろ?」 御影 「おらんて」 フジモリ 「・・・そんな無下にせんでも」 御影 「はいはい。で、感想は?ま、あんたは大の森ファンやから満足したと思うねんけど」 フジモリ 「そうだね。S&MシリーズやVシリーズに見られる「森イズム」が好きなフジモリとしては、非常に満足だった。質問自体は多種多様で、フジモリが答えられるレベルのものもあれば、森助教授が褒めるぐらい高度な(視点の鋭い)質問もある。しかし、やはり注目するところは、それらの質問に森助教授がどう答えているかだ。そこかしこに見られる「森イズム」は、問答集という形をとりながらも森ミステリィと同じ思想が流れているということを感じさせられる。ファンブックと言ってしまったけど、この本も森博嗣の他の作品と同列に並べてしかるべき作品だな、と思ったよ」 御影 「こんな授業をするなんて、変わったセンセやなぁ」 フジモリ 「フジモリも受けてみたいよ。でも、どこの大学にもこんな先生いるんじゃない?」 御影 「ああ、そうかもな」 フジモリ 「そうそう。そういや、フジモリが通ってたK大の心理学の授業で面白い伝説があったなぁ」 御影 「?んなん、あったっけ?」 フジモリ 「そうか。フジモリが入学したばかりだから、まだ御影(関西人格)が出来てなかったんだな」 御影 「入学したてゆぅたら、一般教養の授業やな。受講者が100人以上の授業」 フジモリ 「そう。そこで心理学を教えてる教授が、「私の赤裸々な告白」というタイトルのレポートを宿題に出した。しかもその時、過去の生徒が書いたレポートとして事例を挙げ、読み上げたんだ」 御影 「ふむふむ」 フジモリ 「それが官能小説ばりの生々しい内容。学生たちは「こういうものを書かなければならないのか」とびびってしまった」 御影 「確かに、そんなん書かなあかんとなると、レポートを出すか出すまいか迷うわなぁ」 フジモリ 「で、次の授業でレポートを集めたあと、その教授が一言。 「このレポートは、きみたちが「単位のためならどこまでするか」を心理学的に調べる実験だった」 ってね」 御影 「なんやそらぁ!!」 |