フジモリの脳内ラビリンス

〜a labyrinth in fujimori's brain〜

Fourty-first bookshelf
西澤保彦『夢幻巡礼』



フジモリ 「さて、今回は西澤保彦の「夢幻巡礼」の感想をお送りします」

御影 「・・・なんかいっつも入りの言葉って一緒やな。最近、マンネリ化してへん?」

フジモリ 「のっけからなんだよ。まあそうかもしれないけど、この書評(感想)を全部読んでる人はいないだろうから、別にいいだろ」

御影 「そんなもんなん?」

フジモリ 「まあ、この感想も40回を越えたし、そろそろリニューアルしてもいいかもね。とりあえずは今回の感想だ。
今回の本は、「幻惑密室」「実況中死」「念力密室!」に続く「神麻嗣子の超能力事件簿」シリーズだ。しかし今回は趣きが少し違う」

御影 「そうなん?(ぱらぱらと本をめくる)・・・あれ?今回、神麻嗣子や保科匡緒って出て来ぉへなぁ?能解匡緒の名前は出てくんねんけど」

フジモリ 「その通り。今回は、神麻嗣子シリーズの外伝にあたる。作者談「神麻嗣子たちの最後の敵」が登場する物語だ」

御影 「へぇ。そうなんや。つまり、今回は神麻の「敵」の視点から書いた本なんやな」

フジモリ 「そういうこと。粗筋を簡単に説明すると、

 能解匡緒の部下である奈蔵渉は、警察官でありながら連続殺人鬼であった。彼がかつて遭遇した密室殺人事件から10年後。奈蔵にかかってきた不思議な電話は、新たな闇の扉を開いた・・・。

という話だ」

御影 「ふうん。つまり、今回の主人公「奈蔵渉」が神麻たちのラスボスになるんやな」

フジモリ 「正確にはその子供らしいけどね。奈蔵の存在については前作「念力密室!」の最終話「念力密室F」でほのめかされている。もちろん、奈蔵が狙っているのは能解だから、直接神麻の敵になるわけではないけど、最終的には敵として立ちはだかるんだろうね」

御影 「今までのシリーズを読んだ感想としては神麻は保科と能解の○○なんちゃうんかな、と漠然とした感想を抱いてんねんけど・・・」

フジモリ 「たぶんそうじゃない?作者もあとがきでそれっぽいことを言ってるしね。○○から来た神麻が殺人鬼とどういう関わりがあるのか、うまい具合に読者に疑問を持たせてくれるね。いわゆる「ヒキ」というやつだ」

御影 「ヒキって、「次回に続く!」とか、「CMのあと、驚愕の事実が!」とか、「さぁて、来週のサザエさんは?」とかそういうやつやね」

フジモリ 「さ、最後のはちょっと違うと思うが、そんなようなもんだ」

御影 「しっかし、今回は外伝というだけあって、これまでのシリーズとは全く雰囲気がちゃうなぁ」

フジモリ 「主人公たちの「敵」の話だけあって、すごくダークな話だね。なにしろ主人公が殺人鬼なんだから」

御影 「おまけにサイコさん入っとぉし」

フジモリ 「この話、ミステリィというより、「サイコ・ホラー」というジャンルとして読むほうがしっくりくるね。ちょっと主人公に感情移入して読み進めるのは難しいかもしれないけど、話自体は非常に面白い。フジモリは未読だけど、タックシリーズ(「麦酒の家の冒険」など、匠千暁たちが登場するシリーズ)の「依存」と同じく、今作「夢幻巡礼」でも「母親への依存と自立」というテーマが出てくる。テーマはかなり重いし、神麻嗣子らいつものレギュラーメンバの登場を期待して読むとちょっと物足りないかもしれないけど、外伝としては非常にいい出来だ。普段のシリーズが明るいだけに、この本のダークさが際立つんだろうね」

御影 「確かに。これだけダークなのを読めば、本編の明るさもまた引き立つしなぁ」

フジモリ 「そうだね。シリーズ全体の感想としては、完結してから取り上げることにするんで、神麻嗣子シリーズ全体を通したストーリィの予想や感想についてはここでは詳しく述べないけど、早く次の本編を読みたい、そう思わせる一冊だったね」

御影 「フジモリ、殺人鬼好きやもんねぇ」

フジモリ 「誤解を招く言い方をするんじゃない!フジモリは殺人鬼じゃなくて、「悪役」「敵役」が好きなだけだ。やはり、悪役が魅力的だと、作品自体のクオリティが非常に高くなる。悪役が主役以上に魅力的な作品もけっこうあるしね」

御影 「「幽遊白書」の仙水とか?」

フジモリ 「あれは、結果的に悪役が「勝って」しまった物語だからねぇ。それはおいといて、そういった悪役に注目する視点から読んでも、「夢幻巡礼」の主人公、奈蔵渉の悪役っぷり(ややこしいな)は及第点だ。まあ、「なんでそんなあっさり超能力を受け入れられるんだ!」とか「おいおい、そんなに簡単に人は殺せないだろ」というツッコミをしたいが、それぐらいはご愛嬌。「依存」というテーマを軸に奈蔵の精神が壊れていく過程やそのサイコっぷり、殺しっぷりは、神麻たちの敵として遜色ないね。まさしく、相手にとって不足なし!って感じだ」

御影 「やっぱあんた殺人鬼好きやろ。ほな、この作品、異色やけど神麻シリーズの中ではかなり重要な位置を占める作品ってことやな」

フジモリ 「うむ。外伝だからとか神麻ちゃんが出ていないからだとか暗い雰囲気だからとかで読むのを敬遠していた人は、ぜひ読んでほしい。この作品、いわば神麻シリーズのターニングポイントだからね」

御影 「ふむ。この作品の存在が、いっそう神麻シリーズに厚みを持たせ、ひきしめてるわけやな。
 ・・・この感想も最近マンネリが続いとぉし、ここらでひきしめないなんのんちゃうん?」

フジモリ 「ひきしめるって・・・どうやってだよ」

御影 「今回読んだ本みたいに、悪役を登場させるとか。「ついに登場!フジモリ内の悪の人格!」なんてどうや?」

フジモリ 「誰が戦うんだよ、誰が」

御影 「そりゃもちろん、世界初のツッコミ探偵のウチに決まってるやろ!「ツッコミ探偵御影と悪の総統裏フジモリの激しい戦い!脳内ラビリンスが戦場となる!」なんてのはどうや?」

フジモリ 「このページの主旨が違ってくるだろうが!」

御影 「だめなん?」

フジモリ 「だめ」

御影 「ちぇぇ」

フジモリ 「まあ、マンネリ化を防ぐという意見には賛成だ。書評が50回を越えたら、ちょっと雰囲気を変えてみるのはいいかもね」

御影 「そやろ!そやろ!」

フジモリ 「そうだな。よし、そういう方向でいっちょ行ってみるか!」

御影 「最終回に向けて!」

フジモリ 「勝手に終わらすなぁっ!!」



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