フジモリの脳内ラビリンス

〜a labyrinth in fujimori's brain〜

Twenty-seventh bookshelf
西澤保彦『実況中死』



フジモリ 「てなわけで、おとしてみました!」

御影 
「なんやねん!それ!」


フジモリ 「・・・さて、別に封印してたわけではないのですが、今回は久々のミステリィの感想になります。西澤保彦の、「実況中死」です」

御影 
「・・・(最初のセリフはなんやったんや?)」

フジモリ 「今回読んだ本は以前感想でご紹介しました「幻惑密室」の続編にあたります。神麻嗣子の超能力事件簿シリーズの(単行本化)2作目です」

御影 
「単行本化2作目って?」

フジモリ 「この「神麻嗣子」シリーズ、時系列で言えば次作「念力密室」という短編集の事件が最初なんだ。だから、これからこのシリーズを読もうとしている人は、「念力密室」のいくつかの短編を読み、その後「幻惑密室」「実況中死」と進むのがいいかもしれない。神麻と保科、能解が知り合う最初の事件が「念力密室」に収録されているからね」

御影 
「でも、あんたは「幻惑密室」から読み始めたんやろ?」

フジモリ 「別に、「幻惑密室」から読み始めても支障はない。時系列による登場人物の心情の移り変わりを追うにはちょっと向いてないかもしれないけど、これはこれで楽しめるよ。ま、そういったシリーズ全体を通したストーリィについての感想は次回にまわすとしよう。では、遅くなったけど、粗筋を」

御影 
「はいな。
 落雷に撃たれた主婦、岡安素子は、他人が見る景色を見られるようになってしまった。しかも、殺人、ストーカー行為をしている映像つきで。偶然その話を聞いたミステリー作家保科匡緒は、超能力者問題秘密対策委員会(略してチョーモンイン)見習いの神麻嗣子と刑事・能解匡緒の協力を得て、素子が見る映像の「ボディ」となっている人物、殺人者をつきとめていく、ゆー話や」

フジモリ 「うむ。ネタバレぎりぎりのうまい粗筋説明だ。ナイス(と言って、親指を立てる)」

御影 
「いえ〜い(親指を立てる)」

フジモリ 「前作でも言ったけど、作者が「SFとして楽しんでもいいし、ミステリとして楽しんでもいい」といってる通り、超能力自体もうまく設定が考えられ、しっかりとした「世界」が構築されている。こういうパラレルワールドを扱ったミステリィとしては、「生ける屍の死」などでおなじみの山口雅也が有名だけど、西澤保彦は彼とはまた違った作風だ」

御影 
「どんなんなん?」

フジモリ 「山口雅也は「世界そのものがトリックに関わる」パラレルワールドミステリィなんだけど、西澤保彦は「世界の設定は厳然たる「ルール」である」パラレルワールドミステリィというわけだ」

御影 
「ぶっぶー。ネタバレ警告!」

フジモリ 「ギリギリセーフだと思うけどなぁ(アウトだと思われた方、ご連絡下さい)。まあ、ネタバレについては3月発行のとある本で取り上げることにして、今回は西澤保彦についてだ」

御影 
「西澤保彦の「世界」は、「ルール」なん?」

フジモリ 「ああ。数学の問題でいう、「前提条件」みたいなもんだ。「A=Bとする」みたいなね。そのルールを厳密に設定することによって、「超能力」といういわばなでもありな世界でもミステリィを作ることが可能になっている」

御影 
「なんか前回の感想とダブっとぉで」

フジモリ 「なら、ここからが前回からの付け足し。この「神麻嗣子」シリーズは、「超能力」を扱うことでミステリィに幅を広げた。しかも、超能力について最初に「ルール」を明言してしまうことで、読者が純粋に推理に没頭できる環境を作ったわけだ」

御影 
「推理?」

フジモリ 「読者だってただぼけっと読んでるわけじゃあない。つらつら読んでいながらも、「誰が犯人か?」ぐらいは推理するもんだよ。本格的な推理小説マニアになると、それこそ最初からじっくり読んで伏線のすべてをおさえ、登場人物は通行人Aからチェックしながら推理し、読んでいく」

御影 
「げっ。・・・そんな人おるん?」

フジモリ 「そういうヘビィな人もいるだろうね。で、ヘビィな人から軽く流し読みするライトな人まですべての読者が思うのは、「自分の期待がいい意味で裏切られること」。つまり、「納得のいく意外性」なわけだ。それの質によって、読者がその作品に抱く感想が決まってしまう。そういった意味では、古今東西、あらゆるミステリィはネタを出し尽くしてしまった。多く本を読んだ人なら、パターンが読めてしまうんだ。ミステリィ作家の辛いところだね。常に「意外性」を求めなければいけない。しかも、フェアな形で、だ」

御影 
「確かになぁ。まあ、もちろん、推理小説だけやのぉて、マンガやゲームなんかでも「このネタ前に見た!」ゆうパターンが往々にしてあるけど、ミステリィはこの傾向がかなり顕著やからなぁ」

フジモリ 「西澤保彦の作品は、そういう意味でミステリィの幅を広げた新しい推理小説だとも言える。まあ、「ルール」があるぶん、その「ルール」に従えばパズルが解けてしまうから、「意外性」という意味では勘のいい読者には物足りないかもしれないけど、それでも一読の価値はあるね」

御影 
「作者が「パズル」ゆーてるし、解いてもらうことを前提で書いてるんちゃうん?」

フジモリ 「おお、いいこというね。フジモリはあんまり考えずに読み進めたからすべての謎に対し解答することはできなかったけど、じっくり読めば解けるかもね」

御影 
「まあ、「謎」自体は本格的な「パズル」やけど、前もゆーたけど神麻ちゃんなどかわいい「キャラクタもの」としてもおもろいからなぁ」

フジモリ 「以前、「時の果てのフェブラリィ」で説明したけど、小説に必要な3大要素、「キャラクタ」「ストーリィ」「世界」、すべてに及第点がつけられる作品だと思うよ。3つのどの視点から注目しても面白いシリーズだ」

御影 
「なんかフジモリは「キャラクタ」フィルタに偏っとぉ気がすんねんけど・・・」

フジモリ 「大きなお世話だ」

御影 
「まあ、この作品について言えば、作者がこの「世界」をうまく書けるようになってきたのか、前作よりわかりやすくなっとぉな」

フジモリ 「そうだね。それに、今回の超能力は「テレパシー」というSF素人でもよく耳にする単語だ。その使い方もうまいし、キャラクタの掛け合いも前作以上にやりとりが面白い。シリーズものとしても、単体のミステリィとしても楽しめた作品だったね」

御影 
「で、あんたはいい意味で「裏切られた」ん?」

フジモリ 「ああ。作者の術中にはまったよ(笑)」

御影 
「おうおう、意表をつかれる、ええ読者やなぁ(笑)」、

フジモリ 「・・・まあ、読者の意表を常につかなくてはならないという点では、この感想も同じだなぁ。ありきたりの感想を書いてもつまらないし、かといって辛辣な批評を書くのはフジモリのポリシィに反する」

御影 
「そぉやなぁ。・・・せやから、毎回感想に「オチ」をつけとんの?」

フジモリ 「そういうことにしとこうか。感想というより、読んだ本を題材にした小噺という感は否めないけどね(笑)」

御影 
「せやったら、オチをちゃんと考えなあかんで」

フジモリ 「うっ」

御影 
「最近、オチがおざなりやもんなぁ。使いまわしが多いし。それこそ、読者がオチを読めるようになってまうで。そんなんなったら、この感想のアイデンティティがなくなるで」

フジモリ 「う〜む。どうしたものか」

御影 
「さっきの古今東西のミステリィやないけど、たいがいのパターンはやりつくしたやろ?毎回の感想って、オチを思いついてから書きはじめとぉもんな」

フジモリ 「関西人格の悲しいサガだよなぁ。話にオチをつけないと気がすまないっていう」

御影 
「せやけど、「感想」やって一つの作品や。締めの言葉のひとつもあったほうがええやろ?」

フジモリ 「そうなんだよなぁ・・・(考え中)」

御影 
「(小声で)考えたって、そうそう斬新なオチは出ぇへんと思うねんけどなぁ・・・」

フジモリ 「・・・。(考え中)・・・よし!今回は初の試み!趣向を変えて、オチをいちばん始めに持っくことにしよう!どうだ!意表をついたオチだろ?」

御影 
「!・・・それが冒頭のセリフかいっ!」



TOPページにもどる