フジモリの脳内ラビリンス

〜a labyrinth in fujimori's brain〜

Twenty-fourth bookshelf
山本弘『時の果てのフェブラリー』



フジモリ 
「さて、アイヨシではないけど、ミステリィ封印期間なのか、今回読んだのはハードSF。山本弘の「時の果てのフェブラリー」だ」

御影 
「昔、フジモリってSFを「スペース・ファンタジィ」だと思っとんたんやんな?」

フジモリ 
「昔の話を出すなぁっ!・・・まあ、当時は「銀河英雄伝説」が最初のSFだったから、SFといえば宇宙ものだという誤った認識があったんだろう」

御影 
「当時と言えば、この本を最初に読んだんもその頃やんなぁ?」

フジモリ 
「おっ。いいつなぎだねぇ。そのとおり。この本は11年前に角川スニーカー文庫から出版されたものに加筆・修正が加えられた本だ。
 超能力、「オムニパシー」で人の心を読むことができる少女フェブラリーは、地球上に突如出現した異常地帯「スポット」に向かう。その中では、重力も、時間も、地上とは異なる空間だった。
スポットの秘密とは?
そしてフェブラリーの運命は?
・・・今回はアニメの予告調に粗筋を述べてみました」

御影 
「余計なところに凝らんでええっ!」

フジモリ 
「でも、改めて読み返してみると、当時のフジモリが理解したとは思えないほどの難解さだな」

御影 
「専門用語ばりばりやな」

フジモリ 
「この本の作者の山本弘は、と学会の会長として知られている。世の中の「トンデモ本」(著者が意図したものとは異なる視点から楽しめる本)を研究しているんだ。「と学会」は、筆者は大まじめで書いているが、明らかに間違っている内容の本を、軽く笑い飛ばそうという主旨で動いているんだが、そのためには科学の知識がないといけない。相対性理論を否定している本には過去の実験結果と反証を挙げて突っ込み、プラズマを提唱する某学者には論理学の基礎を用いて突っ込む。作者の知識はなかなかのものだし、この本、「時の果てのフェブラリー」はその知識が存分に詰め込まれている。もう、設定自体で勝ったようなもんだよ」

御影 
「勝ったって・・・どんな表現やねん」

フジモリ 
「もともと、物語には3つの構成要素がある。御影、なんだかわかる?」

御影 
「努力・友情・勝利」

フジモリ 
「基本的なボケだな」

御影 
「速い・安い・うまい」

フジモリ 
「古いな、おい」

御影 
「車は・急に・止まれない」

フジモリ 
「標語を3つに区切っただけだろうが」

御影 
「今日何時?・6時?・んじゃ、6時にハチ公前で」

フジモリ 
「わけわかんないよ!もういいって!」

御影 
「爆笑問題の田中みたいな突っ込みやな。で、3つって?」

フジモリ 
「うう、危うく主旨を忘れるところだった。物語の構成要素とは、「キャラクタ」「ストーリィ」「世界」の3つだ。この中のどれかが面白ければ、物語は「面白い」という評価を得ることができる」

御影 
「ストーリィはわかるなぁ、ちゅうか、これがメインやなぁ。「キャラクタ」もわかる。マンガなんかはこっちに比重が置かれとるなぁ。で、「世界」?」

フジモリ 
「そう、3つ目の要素は、「世界」だ。多くの小説は現代を舞台にしているから考証が必要ないし、歴史ものも資料を調べればいいんだからこれとは違う。物語の舞台を0から創造する、それが「世界」だ」

御影 
「0から?具体的には?」

フジモリ 
「これは、SF作品はほとんど当てはまるんじゃないかな。「もし」巨大な潜水艦があったらと仮定する物語「海底2万里」、「もし」地球に宇宙人が攻めてきたらと仮定するH・G・ウェルズの「宇宙戦争」、「もし」今から100年後の世界で殺人事件がおきたらと仮定した森博嗣の「女王の百年密室」・・・挙げていくときりがないけど、これら全てに共通して言えるのは、「魅力的な世界観」と「それを支えるディティール」だと思うよ」

御影 
「確かに、おもろいSFなんかはその世界の人々がどんな物を食べているか、なんてゆうんも綿密に考えとぉもんなぁ」

フジモリ 
「アニメでいえば宮崎作品だね。マンガでいえばジョジョ。で、この本、「時の果てのフェブラリー」はまさに「世界」の構築という面では他のSF作品に比肩するだけの綿密さを持っている」

御影 
「「スポット」の設定のこと?」

フジモリ 
「スポットの中では重力が軽くなり、時間の進みが速い。その中では色の波長も変わり、電磁波により金属は使えない。そういったことが科学的な考証により、綿密に設定されてるんだ」

御影 
「正直、文系のうちにはわけわからん単語が多いわ。たけいが読んだらまた別な観点から面白さを発見してもらえるんやろな」

フジモリ 
「かもね。理系の人が読むとさらに面白いと思うよ。この本が11年前に出版された当時、これだけの話をフジモリが理解できたとは思えない。フジモリにとってはいい再会だと思ったし、焼きなおしたとは思えないほどの内容だ。難解な科学用語は雰囲気だけ味わい、SFというものを呼んでみるのも面白いかもしれないね。最近はなんでもミステリーというジャンルにしてしまうし、実際本の売れ行きではミステリーというジャンルがダントツだ。そういう風潮の中、SFという直球勝負のこの本を評価したいし、内容もその直球に負けていないほど良く練られている。自分の好きなジャンルと異なるジャンルの本を読みたいと思っている人は、SFというジャンルを知るためにこの本を手にとって見てほしいな」

御影 
「実際、フジモリはほとんど科学用語を読み飛ばしとったしな(笑)」

フジモリ 
「ばらすんじゃない。でも、この本、来週(2月18日)感想書きたかったなぁ」

御影 
「?、なんで?」

フジモリ 
「来週はちょうどフェブラリーステークスだったからね。更新日記に「フェブラリー感想」を2つ並べて読者を混乱させられるじゃない」

御影 
「ダジャレオチかいっ!!」



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