フジモリの脳内ラビリンス

〜a labyrinth in fujimori's brain〜

Twenty-first bookshelf(ネタバレ感想)
加納朋子『魔法飛行』


註!
今回の書評には内容に関するネタバレがあります。未読の方はご注意ください。


フジモリ 「ふやあ」

御影 「ふやあ」

フジモリ 「というわけで、今回は加納朋子「魔法飛行」です」

御影 「前作、「ななつのこ」の続編やけど、連荘での感想ちゃうねんな」

フジモリ 「間に森博嗣の「今夜はパラシュート博物館へ」が入ったからね。俗に言う「割り込み要求」というやつだ」

御影 「言うかぁ?」

フジモリ 「言うんだよ。御影も言ったけど、内容的には前々回取り上げた「ななつのこ」の続編にあたります。では、あらすじをお願い」

御影 「なんか最近うちがあらすじ係になっとぉな。えーと、「ななつのこ」の主人公である入江駒子は、前作で知り合ぉた瀬尾さんの「もっと気楽に考えればいいじゃないか。手紙で近況報告するくらいの気持ちでね」という勧めにより、物語を書き始めるんのや。この本は、駒子が書いた「身近に起こった不思議な出来事を描いた小説」という謎の提起、「瀬尾さんによる感想文」という解決編、そして「差出人不明の手紙(感想文)」という幕間によって構成されとるんや。4作の連作短編やな」

フジモリ 「前回が一話一話のなかに童話「ななつのこ」を挟み込んだサンドイッチ構成なのに対し、今回は「駒子の小説」「解決編の手紙」「幕間の手紙」という菱餅構成というわけだ」

御影 「あいかわらず食べ物の例えが好きやなぁ」

フジモリ 「比喩はわかりやすく、が今年の目標だ。しかし、あいかわらず読後感がいいね、温もりを感じさせるというか、ほのぼのというか、読んで心が暖かくなれるよ」

御影 「前と感想はまったく同じやな」

フジモリ 「「ななつのこ」の感想の時に、この小説は「童話」だと言ったんだけど、ちと修正。加納朋子の小説は、「メルヘン」なんだね。特に、この小説のタイトルにもなっている第3話「魔法飛行」は、「魔法」という不思議を軸に、「不思議を信じてもらいたい」男性と「不思議を信じさせてほしい」女性のもどかしい様子が描かれている。それを結ぶキーワード「魔法」と、瀬尾さんの「空想力」がある。「魔法」という不思議を解き明かす瀬尾さんの空想力。空想力とは「空を想う力」。このフレーズはかなり気に入った」

御影 「なんか、駒子の感性が好きやなぁ。自分の甘さを指摘されながらも、精一杯生きてるところなんかはけなげやわぁ」

フジモリ 「いつになくセンチだね」

御影 「なんや!「いつになく」て!うちかてセンチメンタルになったりするわ!
・・・・・・。センチメンタルの「メンタル」はわかんねんけど、「センチ」ってなんやろな?「センチメートル」のセンチ?」

フジモリ 「知るか!」

御影 「そういや「デシリットル」ってゆーけど、「デシメートル」とか「デシグラム」って言わへんやんな。なんでやろ?」

フジモリ 「確かに。デシって、可哀想な境遇だな」

御影 「はよ、つっこめ!あんたもノってきてどないすんのや!」

フジモリ 「自分からふっといて逆切れすんな!」

御影 「ま、それはおいといて、このシリーズ、女子大生の一人称の小説なだけに、やっぱ北村薫と比べてまうねんけど、似てるようで似てないんよなぁ」

フジモリ 「当然だ。同じカレー味でも、カレーチャーハンとカレーライスはぜんぜん違う」

御影 「また食べ物かい!しかも今度はわけわからへんぞ!」

フジモリ 「まあまあ。ま、今回の「魔法飛行」は「ななつのこ」に比べてミステリィの要素が強い。しかし、前回も説明したがやはりメインは「謎と解答」ではない。それはあくまでカレーチャーハンに入れるカレー粉、スパイスみたいなものだ」

御影 「カレーライス(北村薫作品)はカレー(謎)がメインやけど、、カレーチャーハン(加納朋子作品)にとってカレー(謎)はチャーハンをおいしくさせる香辛料ってことやな。ま、多分、挙げ出すと相似点よりも相違点の方が多いんやろな。んでも、今回は前回よりもミステリィの要素は強いと思うねんけど」

フジモリ 「そうだね。いくらスパイスとはいえ、ミステリィ部分がしっかりしていることも事実。だからこそ、ミステリィとして認識する読者が多いんだろうし、そういった見方も間違いではないと思う。フジモリだってミステリィだと思って買ったんだから。特に、今回の小説「魔法飛行」は、幕間に挟まる謎の手紙が物語に一本の芯を通している。これ自体が伏線であり、この小説の鍵を握る部分なんだ。この手紙の存在が、この話を単なる短編集ではなく、4つの短編で1つの小説たらしめている。最初の手紙で、読者は「物語を読む」という文面からこの手紙の差出人が駒子の物語の読者だという認識をする。実際に駒子の物語が世に出たあとに読んだ読者からの手紙だと、ね。そのため、2通目からの手紙も同様なものだと思いこんでしまう。うまいミスリード(誤誘導)だよ。最後の話になってこの差出人の招待を知るわけだが、そこでこれまでの話が一つにつながっていたことを知る。ばらばらになったピースが一つになる快感は、京極夏彦の作品に通じるところがあるよ」

御影 「つまり、ミステリィとして読んでも秀逸やっちゅうことやな」

フジモリ 「そうだね。前作「ななつのこ」では「連作短編」の「短編」が強かった感があるけど、「魔法飛行」では「連作」という部分に重きが置かれている。ミステリィ要素を強めながらも、前作同様の温かい読後感を与えている。フジモリは前作よりもこっちのほうが好きだな」

御影 「まあ、どっちが好きかは人それぞれやけどな。ま、前作の感想でもゆーたかもしれへんけど、ミステリィという先入観なしに読んでもらってもおもろいと思うし、人に勧めるにもええ本やと思うで」

フジモリ 「うん。これはいい出逢いだった。偶然ながら、いい本、いい作者、いいシリーズを見つけたと思うね」

御影 「こういう出逢いがあるから、本読みはやめられへんねんなぁ」

フジモリ 「そうだね。この本との出逢いも、作中(あるいは解説)の言葉を借りれば、作者、加納朋子さんがかけた「魔法」なのかもしれないね」、

御影 「ま、まともすぎる締め方や・・・」

フジモリ 「センチだろ?」

御影 「デシやな」



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