| フジモリの脳内ラビリンス
〜a labyrinth in fujimori's brain〜 Twentieth bookshelf 森博嗣『今夜はパラシュート博物館へ』 |
壱ノ重 フジモリ 「さて、ついにこの本棚にも20作目の作品が入ったね」 御影 「漫画も入れて、5ヶ月で20作、27冊。よお入ったなぁ」 フジモリ 「週1ペースか。まあまあだね。ま、読むのはそれぐらいのペースで楽勝だけど、アウトプットがしんどい時もある。正直、20回目になるとは思わなかったよ。「twentieth」なんて単語、中学校以来だよ、使うの。思わず辞書で合ってるかどうか確認してしまった」 御影 「んなあほな。んーで、今回はまぁた森博嗣か」 フジモリ 「またって言うな。フジモリの好きな作家だし、なにしろ本を出すペースが速い。S&Mシリーズの文庫が年3冊、Vシリーズが年3冊、その他小説も出るし、ほぼ毎月森博嗣の本を読む計算になる」 御影 「すごいわなぁ。それでいて、大学の助教授やもんなぁ。バイタリティあるわぁ。あんたも見習わな、あかんで?」 フジモリ 「うう。睡眠時間が短いのだけはいやだ。ま、それはおいといて、今回はその森博嗣の最新作、「今夜はパラシュート博物館へ(以下:今パラ)」を取り上げることにした」 御影 「すぐ読んだんやな。まだどこのHPも書評書いとらんで」 フジモリ 「それに、まだ読んでない人もいるだろうね。でだ。今回はこの感想、重箱形式をとることにした」 御影 「重箱?あの「重箱読み」で有名な重箱?」 フジモリ 「どんな有名のなりかただ。そう。今回は、既読の方は別ページに飛んでもらうことにした。ネタばれ、解説を中心に、より深く「今パラ」の感想を言いたい。ただ、今回の作品はもとより森博嗣の面白さをもっと多くの人にわかってもらいたいから、「壱ノ重」、つまりこのページは未読者を主に対象に、「森博嗣作品の面白さ」について語っていきたい」 御影 「以前やっとらんかった?」 フジモリ 「あれとは違ったアプローチで攻めてみたい。ずばり、森博嗣作品は「エヴァンゲリオン」である!」 御影 「・・・なんやそれ」 フジモリ 「なんだ、そのやる気のない突っ込みは」 御影 「めっちゃ古い例えやな」 フジモリ 「でも、そう思ったんだから仕方がない。ま、理由は簡単。「予備知識なしに見ても(読んでも)面白いが、その元ネタ(知識)を知るともっと面白い。しかも深い」からだ」 御影 「確かにエヴァンゲリオンはそうやったなぁ。単純に見ても(途中までは)ロボットアニメとしておもろいし、その元ネタの「ヒトゲノム」「死海文書」「ヤシマ作戦」などの単語はもとより、パロディもちりばめられとったし」 フジモリ 「ま、パロディという部分に関しては「GS美神」や「不思議の海のナディア」には遠く及ばないけどね。とにかく、エヴァンゲリオンはそういった小難しい知識を知ることによって物語を深く楽しめた。森博嗣もそうだ」 御影 「どのへんが?」 フジモリ 「ただ単にミステリィとして読んでも面白いけど、コンピュータ用語や理科用語を知ってると面白いし、少なからず過去のミステリィ作品へのオマージュがある。犀川が「幻惑の死と使途」で買った車は何か?・・・作中には明記していないけど、文脈から推察できるようになっている。この深さは、エヴァンゲリオンに匹敵するよ。一方、その深さがわからないと「理系ミステリィ」という分類だけで拒否反応を起こしてしまう人も出てくる。とにかく、この深さ、じっくり読むかわかる人に聞かないとわからないからね」 御影 「代表的な作品で言えば、短編集「地球儀のスライス」の「僕に似た人」がそうやね。あれ、書評のHPで指摘されるまでその裏の意味がわからんかったから。普通に読むのと裏の意味で読むのと、2度楽しいわ」 フジモリ 「そういう意味で、短編集は何度も読み直せるし、その鋭さという点では森博嗣のエッセンスが凝縮されているんだ。本人も一冊薦めるとしたら「まどろみ消去」と言ってるしね」 御影 「なんか、短編って、詩みたいな幻想的な作品が多いやな」 フジモリ 「そうだね。もともと森博嗣って、言葉の使い方が素晴らしい。詩人、中原中也が好きなだけあって、その言葉づかいは繊細だ。(中原中也の詩集については今後取り上げるつもりです。フジモリも詩集は持ってます)ただ、繊細は脆さも意味する。それをいわゆる「意味なしジョーク」などの「笑い」でカバーしてるわけだ。このメリハリが、物語に緩急をつけている。フジモリも昔はこういうのはわからなかったけど、これだけ森博嗣を読むとさすがに文章力が下手な作家はわかるよ。読んでて違和感があるもん。作者の意図しないところで思考にストップがかかる作品は、文章力が下手だと主って間違いない」 御影 「舌が肥えてきたんやな」 フジモリ 「かもね。とにかく、森博嗣の短編は長編とまた別な色合いが出て面白い」 御影 「で、「今パラ」か。えらい長い前ふりやったな」 フジモリ 「ほんとに。この短編集、S&Mシリーズの外伝的短編が2作、Vシリーズの外伝が1作と今までにまして長編の外伝的要素が強い」 御影 「特にVシリーズ外伝の「ぶるぶる人形にうってつけの夜」はすごいやな。「西之園家の令嬢」と「小鳥遊練無」の邂逅やもんなぁ。なんか反則やわ」 フジモリ 「いわゆる、作品間のリンクというやつだな。否が応にも燃えるシチュエーションだ。「ドラクエ3」で出てくる勇者「ロト」の称号!「風林火嶄」に登場した暗黒式の「真田梨香」!「ドラゴンボール」で悟空が行った「ペンギン村」!」 御影 「えぇと、どこからどうつっこめば・・・」 フジモリ 「とにかく、その一篇でも読む価値はある。しかし、それ以外の作品も面白い。「ゲームの国」はある意味過去の推理小説をパロディにしてるし、「恋之坂ナイトグライド」はさっきも言った「2度楽しめる」小説。長編を読んでなくても楽しめる本だし、読んでるとなお楽しめる。元ネタ、裏の意味がわかるとなお楽しめる、そんな短編集だね」 御影 「短編やけど、けっこう気合入れな、読めへんな」 フジモリ 「少量ずつだけど、ボリュームがある。海鮮丼みたいな本だな」 御影 「食べ物オチかい!」 フジモリ 「てなわけで、既読者はこちら、"今パラ感想2"「弐ノ重」へどうぞ」 |