| フジモリの脳内ラビリンス
〜a labyrinth in fujimori's brain〜 Twentieth bookshelf(ネタバレ感想) 森博嗣『今夜はパラシュート博物館へ』 |
弐ノ重 フジモリ 「さて、このページでは既読者の方向けに「今パラ」の解説を行います。いわゆるパズルの回答例みたいなもんです」 御影 「「無粋な!」とか「そんなのいらない!」という方はすみません」 フジモリ 「この作品解説風感想が、短編を深く読む手助けになればうれしいですね」 |
どちらかが魔女(Which is the Witch) フジモリ 「まずは犀川&萌絵シリーズ外伝の、「どちらかが魔女」だ」 御影 「トリック自体はめっちゃ簡単やな」 フジモリ 「それがこの話のミソだ。客観的に考えると解答は出るが、大御坊というキャラクタに関わっている人は主観として問題を考えるため、考えつかない。読者だって、 螺旋ホールのある階段を抜けて、ドアを開けるまえに、カメラが捉えた映像を液晶の画面で確かめる。見たことのない人物が映っていた。 諏訪野はドアを開ける。 来訪者が中に入ってきた。 「こんにちは」 「いらっしゃいませ。あの、失礼ですが、どちら様でしょうか?」諏訪野は丁寧な口調で聞いた。 「あ、あの……、大御坊ですけど」 「は?」不注意にも、諏訪野は思わず小さな声を上げてしまった。(P15より) の時に、この訪問者を大御坊安朋(変身前、あるいは変身後の)だと間違えただろ?それと同じ原理だよ。実はこれは奥さんの方なんだけど、大御坊というキャラクタから諏訪野が(特異な格好をしている)大御坊安朋を認識できなかったと考えた。それと同じ考えを、喜多も萌絵も睦子もしていたんだよ」 御影 「なるほどなぁ。こういう、種がわかってから読み返すと実は違った意味を持っとったっちゅうフレーズは森博嗣作品は多いからなぁ」 フジモリ 「そういえば、本文中で明かされなかったキリストの釘の謎、わかった?」 御影 「いや、全然わからへん」 フジモリ 「これは、壁画が大きいため、遠近法をとるために釘に糸を引っ掛けた跡なんだそうだ。キリストはちょうど絵の中心になるからね。ま、「魔女」談義がミスディレクションということだ」 御影 「ほんま?」 フジモリ 「うん。とあるHPで森博嗣に確認をとったという人が言ってた。あとは、タイトル。本文中では、「どちらが魔女か?」といってたけど、作品のタイトルは「どちらかが魔女」。どちらか一方なんだ。この違い、わかる?」 御影 「「どちらかが」ゆーことは、片方だけなんやな」 フジモリ 「フジモリなりに解釈すると、魔女は大御坊婦人の方。大御坊に魔法をかけて、再会するまで他の女性が大御坊に寄らないようにああいうかっこをさせたんじゃないかとね」 御影 「ま、ほんまは魔女ちゃうやろけどね」 フジモリ 「まあね。でも、大御坊の昔の格好は一種の魔法であり、再会したときに魔法が解けた、と考えるのがロマンチックだろ_?」 御影 「確かにな」 フジモリ 「それに、やっぱ「魔女」は女性じゃなきゃ」 御影 「あんたの趣味かいっ!」 |
双頭の鷲の旗の下に(Unter dem Doppeladler) フジモリ 「犀川&萌絵シリーズ外伝2弾。国枝ファンにはたまらない作品だね」 御影 「んなの、おるか?」 フジモリ 「けっこういるんじゃない?ま、これはいわゆる叙述トリックというやつだ。喜多、犀川の学生時代と間違えた人がいるんじゃない?」 御影 「そりゃあんたやろ」 フジモリ 「みごとにひっかかりました(笑)。で、いきなり事件がが現代だとわかり、国枝女氏の旦那さんが出てくるところなんかは構成がうまいね。ま、トリックはもろ理系でフジモリには考え付かなかったけど」 御影 「ほんまに。理科の講義を受けてるようやったわ」 フジモリ 「良い子はまねをしないでね」 御影 「うう〜。めっちゃやってみたい〜」 |
ぶるぶる人形にうってつけの夜(The Perfect Night for Dancing Doll) フジモリ 「で、問題のVシリーズ外伝だ」 御影 「この西之園の令嬢って、萌絵なんやろ?」 フジモリ 「多分ね。会場の見取り図では「MOE」となってたから、彼女の名前は萌絵なんだろう。でも、ぜったい違うと思うんだけどなぁ。睦子が27の時に姪の萌絵が5歳。睦子が在学中には生まれてた計算だな。なんとか辻褄は合うか…」 御影 「なんでそんなに時代にこだわるん?」 フジモリ 「前も言ったけど、Vシリーズって時代考証がまったく書かれていない。わざとしか思えないほど。で、フジモリは考えた。紅子の子供のへっくんって、のちの「犀川創平」なんじゃないかって」 御影 「へっくんは腹違いの妹もおったよなぁ」 フジモリ 「あれが儀堂世津子。犀川については親について書かれていなかったし、ありそうだと思ったんだけどなぁ…」 御影 「でも、萌絵は萌絵ちゃうん?」 フジモリ 「そうだよなぁ・・・。でも、あれが萌絵だったら、反町愛と練無は同じ学部だから会っててもおかしくないよな?」 御影 「そうやな。あれだけ目立った子なら、萌絵が愛ちゃんから聞いとってもおかしないもんな?」 フジモリ 「だよなぁ。謎が謎を呼ぶ・・・」 御影 「ま、本編でその辺は明かされるやろ」 フジモリ 「だといいけど。ぼかされたまま終わられそうだな。森博嗣なだけに(笑)」 |
ゲームの国(The Country of Game) フジモリ 「これはうってかわって妙な作品だ」 御影 「なんか往年の推理小説のパロディみたいやな」 フジモリ 「確かに。ここの人たちの苗字は!とか、アナグラムが!とか。森博嗣流のパロディだな、これ」 御影 「アナグラムはわかったん?」 フジモリ 「ああ。最初、磯莉卑呂矛が風呂で考えたのは「すべてがFになる」からの書名5冊、次に言ったのは「シンクロナイズドスイミング」だろ?」 御影 「ほう。アナグラムのコツってなんなん?」 フジモリ 「これって、作るのよりも解く方が難しい。ちゃんとした言葉にしなきゃいけないからね。フジモリがやるのは、濁音や小さい「ゃゅょ」などから単語を組みたててしまう。単語数が少ない文字から文字をだんだん減らしていくんだ。他の人はどうやってるのかな?」 御影 「へぇ。んーで、他にも隠し要素はあるん?」 フジモリ 「「エラリクイン」や「イヌガミケ」はミステリファンなら基礎知識だから、みんな知ってるだろう。あとは、探偵の名前かな?」 御影 「いそりひろむ・・・。なんかアナグラムになっとるん?」 フジモリ 「ISORI・HIROM、逆から読めば?」 御影 「MORIHIROSI・・・ああ〜っ!森博嗣や〜っ!」 |
私の崖はこの夏のアウトライン(My Cliff is the Outline against this Summer) 御影 「今度は一転して、幻想的な作品やな」 フジモリ 「そうだね。どこまでが主人公の幻想かが曖昧で、森博嗣らしい作品だったな」 御影 「どこまでが幻想なん?」 フジモリ 「逃げて、転ぶまでじゃないかな?」 御影 「え?でも、最後に私が「加速」しとるで?」 フジモリ 「あれは、ラジコン飛行機なんじゃない?それにカメラをつけて、毎年毎年崖から落ちる仮想体験を味わっている、というオチなんだと思う。最後の一言のキレは、森作品の中でも上位にランクインされるな」 |
卒業文集(Graduation Anthology) フジモリ 「これが、よくわかんない」 御影 「ぱっと見、普通の作品みたいやけどな?」 フジモリ 「先生が人工知能なんじゃないかとか、ネットでの授業なんじゃないかとか考えたけど、オフラインでの感想があるから却下。うーん。考え中です」 |
恋之坂ナイトグライド(Gliding through the Night at Koinosaka) フジモリ 「こっちは、裏の意味がある作品だ。わかりやすいな」 御影 「鳥やろ?」 フジモリ 「うん。イーグルら「黒いの」はカラス。ぴかぴかの靴を軒先に上げてるしね。外国に行くのは渡り鳥。フジモリは鳥に詳しくないんで種類は断定できないけど。まず人間だと思って読み、よく考えて鳥だとわかって読み直すというのがこの作品の楽しみ方だね」 |
素敵な模型屋さん(Pretty Shop of Models and Toys) フジモリ 「最後は、森博嗣の自叙的作品だね」 御影 「模型かぁ。わかる人にしかわからん世界やな」 フジモリ 「最後の模型屋さんに入るくだり、今まで買えなかったものが思うように手に入る喜び、それが大人になるということだし、大人になることの特典のひとつかな。ま、模型ではなくとも、自分の趣味と重ね合わせて共感したな」 御影 「フジモリの趣味?巫女さんが好きとか?」 フジモリ 「その趣味じゃない!しかも読者に誤解を抱かせる発言をするな!!」 |
フジモリ 「というわけで、全作品の解説をしてみた」 御影 「まだまだ、深読みできるところがありそうやな」 フジモリ 「気付いたら更新しとくよ」 御影 「んーなこといって、追加したためしはないけどな(笑)」 フジモリ 「うう。好きな森博嗣作品なだけに随時追加していきたいけどなぁ」 |
追記(2001.2.25) フジモリ 「さて、ようやく書けました。「今パラ」追記です」 御影 「追記ゆうことは、なんか新情報でもあったん?」 フジモリ 「うむ。まず、フジモリが解読に苦労した「卒業文集」。あれ、盲学校の卒業文集だったんだね。アイヨシ、サンキュ」 御影 「わからなかったん?」 フジモリ 「裏読みしすぎた(笑)」 御影 「まあ、そう読むと、つじつまは合うな」 フジモリ 「次。「ゲームの国」の「のっそりと、お手」。あれもアナグラムで、京極夏彦の「鉄鼠の檻」がもとだ。「ごちそうさま」は「封印再度」に書かれた推薦文から来ている」 御影 「ほお」 フジモリ 「で、最後。「今パラ」はカバーを作り直したために書店への配給を一度ストップさせたんだけど、もとは折り返しの粗筋に「西之園家の令嬢」と書かれていた部分が「風変わりなお嬢様」に修正されている。自分が持っているのが修正前か後か、チェックしてみても面白いね」 御影 「なんや、ほんまに追記したんやね」 フジモリ 「あとは、「メテ・クレモナ」の謎だけだね(笑)」 |