| フジモリの脳内ラビリンス
〜a labyrinth in fujimori's brain〜 Seventeenth bookshelf 宮部みゆき『震える岩』 |
フジモリ 「さて、今回は宮部みゆきの「震える岩」を読んでみることにしました」 御影 「おお、メジャどころやね」 フジモリ 「ところが、意外と知られていない」 御影 「うそぉ!?」 フジモリ 「ほんとの話。本に縁がない人はもとより、ミステリ(ミステリィ)を読まない人は宮部みゆきと言っても「?」となるんだ。実際、フジモリの知り合いから「何の本読んでるの?」と聞かれたとき、森博嗣や京極夏彦よりメジャかな、と思って「宮部みゆきなんかを読んでる」と答えても、「?」と言われた。ドラマ化、映画化もされたけど、知名度は低いみたいだね。ま、宮部みゆきに限らず、現代ミステリ作家の知名度はこんなもんだと思うよ。一般人が知ってるミステリ(ミステリィ)作家は、クリスティ、コナン・ドイル、赤川次郎、やや知名度が下がって松本清張、江戸川乱歩ってとこかな」 御影 「こうしてみると、フジモリが読んどぉ本は、ほんまマイナなもんやって再認識させられるわ」 フジモリ 「そうだね。マイナなわりに、ミステリィではベーシックな作家はあんまり読んでない。中途半端なんだよなぁ。そこで大御所、宮部みゆきを読もうと一念発起したわけだ」 御影 「宮部みゆきって、どっちかゆーと時代小説のイメージが強いねんけど」 フジモリ 「この作家は「火車」「魔術はささやく」などのミステリィ(どちらかというと「サスペンス」かな)、「蒲生邸事件」などの時代物、「クロスファイア」などの超能力物と様々な作品を書いている。今回読んだ「震える岩」は時代小説兼超能力小説兼ミステリィ。入門書としては最適かな、と思ったわけだ」 御影 「あらすじは?」 フジモリ 「副題に「霊験お初捕物帖」とあるのだが、内容も字の如し。見えないものが見え、聞こえないものが聞こえるという不思議な力を持った少女、お初が、仲間とともに江戸で起こる奇妙な事件を解決する物語だ。富士見ファンタジア文庫刊」 御影 「ちゃうやろが!」 フジモリ 「いや、読後感想がまさにそんな感じだった。ジャンルで言えば、「ファンタジィ」が一番近いのかもね」 御影 「時代小説ちゃうかったん?」 フジモリ 「確かに、「捕物帖」とうたっているし、当時の時代考証はしっかりしている。ただ、そこで「超能力」というものを持ってきてるんで、どうしても「パラレルワールド」というイメージになってしまうな」 御影 「京極夏彦の作品とはちゃうん?」 フジモリ 「あれは、超能力や妖怪が「ない」世界だからねぇ。いくら榎木津が過去をみることができるとしても、それは京極堂の言葉により「日常」に配置されてしまうんだ。「震える岩」のお初の力の場合、ある程度説明がつけられてはいてもやはり幽霊が「いる」という世界だというように読み取れてしまう」 御影 「あんたがそう思っとぉだけちゃうん?」 フジモリ 「かもしれないなぁ。でも、超能力物として読んでも面白いから、別にいいんだけどね」 御影 「結局どっちでもええんかい!」 フジモリ 「それに、ミステリィとしても上質だ。夜になると震えだす岩、忠臣蔵の元となった吉良邸襲撃事件、死人が蘇る事件という様々な事件がお初の超能力で一つにつながる過程は、読む者を唸らせる。また、そこに実在の書物である怪異を記した本、「耳袋」を絡め、物語に厚みを増しているんだ」 御影 「豪華やな。三色丼みたいや」 フジモリ 「どんな例えだ。まあ、この本はある意味で宮部みゆきのエッセンスが凝縮された本であり、宮部みゆきの様々な顔が楽しめる、初心者向けの本かもしれないな、というのが今回の感想だな」 御影 「いろいろな楽しみ方があるわけやな」 フジモリ 「時代小説として面白いと思ったらアイヨシも紹介した「幻色江戸ごよみ」なんかを。ミステリイ、サスペンスとして面白いと思ったらこれまたアイヨシが書評をした「火車」。超能力物として面白いと思ったら、アイヨシが映画を(内輪で)酷評した(笑)「クロスファイア」や、「龍は眠る」など。いずれの道にも通じている、非常に懐の広い本だ。映像化しても見栄えがいいと思うし(どこかドラマ化しないかな)、ライトに読むには最適の一冊だね」 御影 「で、フジモリはどの本を読もうと思ったん?」 フジモリ 「やっぱり「サイラーグの妖魔」が一番物語としてまとまってたなぁ」 御影 「富士見ファンタジア文庫やろがぁっ!」 |