フジモリの脳内ラビリンス

〜a labyrinth in fujimori's brain〜

Fifteenth bookshelf
ロアルド・ダール『あなたに似た人』



フジモリ 「ご無沙汰です。今回は、ロアルド・ダールの「あなたに似た人」を取り上げたいと思います」

御影 
「えらいさっぱり風味やな。いつものつかみのボケはどしたん?」

フジモリ 「いつもいつもボケてるわけじゃないって!今回は久々の感想ということもあり、淡々と進めよう」

御影 「ほんま、数週間ぶりやからな。アイヨシに書評が追いつかれそうであせっとるし」

フジモリ 「うちのページは量がすべてだからなぁ。最近の更新量が少ないのは致命的だ。ま、だからといって、適当に読んだ本を適当に紹介しようとは思ってないけどね」

御影 「いままではちゃうかったん?」

フジモリ 「違うっての!とにかく、感想に入ります。この作品は、15編の短編集。オビにはミステリ部門で第9位とか書いていたけど、どこがミステリなのかいまだによくわからない」

御影 「ダ・ヴィンチの今年のベストミステリーの中に創竜伝が挙げられとったのも謎やけどな(笑)」

フジモリ 「この作品は、ブラックユーモアをちりばめた一作20ページ程度の短編。解説によると、これらの作品は「賭博に打ち込む人間の心の恐ろしさ」と「人間の想像力の恐ろしさ」を描いている、とのこと。前者の代表作は「味」。晩餐会で美食家を自認する客の一人が、ワインの銘柄を鑑定できるかという賭けに自分の邸宅を賭ける、という話。後者の代表作は「お願い」。少年が、犬が飼いたいという願いが叶うかどうか、絨毯の白い部分のみを歩いて外に出れるか、というルールを心に決め、冒険するという話」

御影 「後者の話なんか、昔やったことがある人がおるかもな」

フジモリ 「横断歩道の白い部分しか通らないとかね(笑)。そんな風に、「ひょっとしたら、あなたもこの物語の誰かに似ているのかもしれませんよ」という意味で、「あなたに似た人」というタイトルがつけられている。常軌を逸脱する一歩手前の状態に陥る登場人物たち。彼らを作者、ロアルド・ダールはユーモアと皮肉を交え、描いている。最後のオチはある程度予想できるものも多いが、逆に自分たちの日常に密接なものを感じ、身震いする。一作一作が短いし、暇を縫って読むには最適の本だね」

御影 「フジモリはどれが良かったん?」

フジモリ 
「「南から来た男」。オチの壮絶さといい、中身といい、ピカイチだ。特にこの作品、「ジョジョの奇妙な冒険」に通じる部分がある」

御影 「どこ?」

フジモリ 「ジョジョ(および荒木飛呂彦作品)には、「些細なこと」に対して「とんでもないもの」を「賭ける」話が出てくる。第3部のジョジョではグラスに注がれたワイングラスにコインを入れ、水があふれたほうが負けというギャンブルに自身の魂を賭けたし、第4部ではジャンケンに負けると自身の能力が吸い取られるという敵が出てくる。第6部ではキャッチボールを100回続けるという賭けに1000ドル賭けるし、短編「岸部露伴は動かない」ではポップコーンを3回空中に投げてキャッチしなければ命を奪われた。こういう、「手段」のスケールが小さいギャンブルに「目的」とされる賭けの対象が大きいというシチュエーションは荒木飛呂彦の十八番だ。で、ロアルド・ダールの作品にも同じような作品があった」

御影 「それが「南から来た男」なん?」

フジモリ 「そう。この話で登場する「南から来た男」である老人は、嫌いなイギリス人の青年に向かってこういう賭けを提案する。「あなたの良く火が点くライターで、10回連続で火がついたら私のキャデラックを上げましょう。しかし、もし10回連続で点かなかったらあなたの小指をもらいますよ」とね」

御影 「ライターの火を点けるだけで車と指を賭けるん?」

フジモリ 「そう。この話の結末は実際に読んで確認してほしいんだけど、この話にあるようなたいしたことない方法でハイリスク・ハイリターンな賭けをする。これは荒木イズムであるし、作者がこの作品を読んだ可能性が大きいと考えられるね。例えば、

「よし」とするどく言って、「賭けましょう」
「グッド!」
 ちいさな男は、両手を音もなく一度だけたたいた。(p67より)

 という一節もあるしね」

御影 「この「グッド!」って、結構使われるやんな」

フジモリ 「ま、それだけこの作品の影響力がすごいってことだろうね。そういう観点から読んでもおもしろいかもね」

御影 「賭博の恐ろしさかぁ。・・・あんたの競馬のページとリンクしたろか?」

フジモリ 「余計なお世話だ!」



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