| フジモリの脳内ラビリンス
〜a labyrinth in fujimori's brain〜 Fourteenth bookshelf(ネタバレ感想) 森博嗣『幻惑の死と使途』『夏のレプリカ』 |
フジモリ 「さて、今回の感想は森博嗣の『幻惑の死と使途』と『夏のレプリカ』。森博嗣については別コーナで考察をしているけど、今回は文庫版の発売を記念してこの2冊をもっと深く考察してみることにした。ちなみに、今回は既読の方に対しての感想であり、未読の方は絶対に読まないで下さいね」 御影 「なんで2冊なん?」 フジモリ 「この2冊、発売日が同じ日なのは伊達じゃない。『幻惑の死と使途』と『夏のレプリカ』は同時期に起こった2つの事件をパラレルに書いてある作品なんだ。『幻惑の死と使途』は奇数章しかないし、『夏のレプリカ』は偶数章しかない。今回は、作者の言う通り、奇数章と偶数章を順番に読むことにした」 御影 「で、どやったん?」 フジモリ 「事件は全く関係ない二つだが、人物が並行してるため、その動きがはっきりわかって面白かった。鵜飼刑事とか長野と那古野を行ったり来たりしているし。それに、事件こそ異なれど、『夏のレプリカ』は『幻惑の死と使途』のB面という印象を受けたな。表裏一体みたいな感じ」 御影 「具体的には?」 フジモリ 「『夏のレプリカ』は『幻惑の死と使途』と違って事件は地味だが、犯人は萌絵の友人という悲しい結末だし、最後に杜萌と赤松がどうなったのか語られない。杜萌の兄、素生が実は生きていたのだが、それについても触れられていない。赤松がなぜ被害者を殺そうとしたのかも不明だ。『幻惑の死と使途』では犯人、犯人の結末、動機など全てが明確にされるいかにもなミステリィなのに対し、『夏のレプリカ』は全てが曖昧で、胡乱だ。本当に、夏の陽炎を見ているような感じだったよ」 御影 「そーなんや。せやけど、やっぱ再読やからその感想を持ったんちゃうん?初見で2冊をパラレルに読んだら混乱するやろ」 フジモリ 「そうだな。京極夏彦の作品と違いこの事件は2つの事件の間には全く関連性はないからな。萌絵じゃないけど、実際こんな状態だったら混乱するよ。犀川と違ってCPUがマルチじゃないし(笑)」 御影 「でも、前から思っててんけど、この『幻惑の死と使途』、マジシャン、死体消失、トリックノートなど、マンガ『金田一少年の事件簿』の『魔術列車殺人事件』にそっくりやない?」 フジモリ 「死体消失で、頭だけ本物にして、あとは人形なのではないかと考えたりしてるしね。しかも、同じ講談社だ。どっちかが盗作した(特に金田一はトリックの盗作が多いし)などと邪推してもおかしくない。そこで、フジモリは二つの作品が書かれて時期について調べてみた」 御影 「いまさらぁ?たぶん、HPとか探せば当事考察してる人たちとかおるやろ」 フジモリ 「インターネットの利点はわからないことがすぐに調べられることだけど、本当に自分で調べようと思うことはアナログな方法で調べたいもんなんだよ。というわけで、単行本をチェックしたところ、『金田一少年の事件簿』の初出は1996年の少年マガジン。具体的な日時まではわからないけど、たぶん年半ば、6月ぐらい」 御影 「『幻惑の死と使途』は?」 フジモリ 「単行本化は1997年10月。HPの日記によると書いたのは1996年の6月から7月」 御影 「全く同時期やん!?」 フジモリ 「だから、フジモリはこの二つが同時期にインスパイアされるような事件なんかがあったのかな、と調べてみたんだが、特に見当たらない。したがって、この二つは偶然にも同時期に製作された作品なんだという結論に達した」 御影 「でも、森博嗣が書いとぉ間に金田一を見た、ゆーこともありえんのんちゃうん?」 フジモリ 「森博嗣の言葉を信じるなら、金田一の存在を知ったのはTVアニメになってからだそうだよ。それに、『金田一』のトリックをミスディレクションに使っているから、トリックの盗作ではない。そういう意味では、「仕掛けが大きいほどつまらない、ということを一つパロディにしています」と解説している森博嗣の方が一枚上手だな」 御影 「そーなんや」 フジモリ 「あと、これは再読して気付いたんだが、『幻惑の死と使途』の魔術師、「有里匠幻」って、アナグラムになってたんだね」 御影 「うそぉ!?」 フジモリ 「「有里匠幻」を逆さまにすると「幻匠里有」。この事件の犯人は「原沼利裕」。どちらも、「げん・しょう・り・ゆう」と音読みできるだろ?」 御影 「ああ〜〜っ!!ほんまやぁっ!!すごいすごい!」 フジモリ 「一度読んでて気付かなかったのは見落としだったが、それが分かって読んでいくと犀川が原沼を本物の有里匠幻だと断定したのもわかるし、あちこちにほのめかしが見られる。それに、『夏のレプリカ』の最終章で、犀川が新幹線の中で萌絵に「名前が逆だったのには、気付いていた?」と聞いている。これは、『夏のレプリカ』単体で読むとわけがわかんないけど、『幻惑の死と使途』と連作で読むと事件が解決したのちの犀川のセリフだとわかる。ほんと、よくできてるよ」 御影 「最初読んだときは、意味なしジョークかと思ったもんな」 フジモリ 「そう。犀川&萌絵シリーズの特徴は、犀川の意味なしジョークだ。話すことの何割かは意味がないことだが、意味がないと読み流したところが実は重要なポイントだった、なんてことはざらだ。「葉っぱを隠すなら森」という言葉に忠実な作品だね」 御影 「この話、犀川&萌絵シリーズの6,7巻目やけど、全部で1作という扱いだ。ストーリィで言えば中盤。犀川の中心人格の話や萌絵がプロテクトした人格(感情)の話などがちりばめられ、終盤に向けて伏線も貼られ(また「彼女」が出てきたし)、全巻読んでから読みなおすとまた違う面白さがあるね。再読性に耐えられる、というのも森博嗣作品の特徴だ」 御影 「前回の感想でも言ーとらんかったっけ?」 フジモリ 「あれはコミック。読むたびに違った面が見える小説は、やはり面白いよ。やはり、今回は2巻交互に読んで欲しいな」 御影 「んーで、2つの事件に対して混乱して欲しい、ゆーことやな」 フジモリ 「それに、「今どっちを読んでたっけ?」と混乱すること請け合いだな。知らないうちに章がズレてたり、なんてパニックを期待してしまうな(笑)」 御影 「期待するなぁっ!」 |