フジモリの脳内ラビリンス

〜a labyrinth in fujimori's brain〜

Twelfth bookshelf
J・ヴェルヌ『ミステリアス・アイランド(上・下)』



フジモリ 「今回はちょっと毛色の違う本の感想だ」

御影 「J・ヴェルヌ?誰なん、こいつ?」

フジモリ 「こいつとかいうな!フジモリが尊敬する作家の一人だ!19世紀を代表するSF作家で、代表作は「八十日間世界一周」「海底ニ万里」「十五少年漂流記(原題:2年間のバカンス)」などなどという凄い作家。フジモリは中国文学を専攻するかヴェルヌのフランス文学を研究するか最後まで悩んだ」

御影 「これらの作品って同じ作者やったん?」

フジモリ 「そう。19世紀という時代に現代の科学技術について的確に書かれた作品を多く世に残している。「月世界に行く」なんかは大砲の弾に乗った人たちが月まで近づいて帰ってくるわけだけど、その軌道はほとんど誤差がなかったそうだ」

御影 
「すごいねんな」

フジモリ 「それに現代の科学主導による世界の危険性も説いている。あらゆる意味で先見の明を持ったすごい作家だよ」

御影 
「で、今回の作品は?」

フジモリ 「今回は、いわゆる「無人島もの」。南北戦争の中、虜囚となった5人が気球にのって嵐の中脱出したが気球は嵐で飛ばされ太平洋のとある無人島に到着し、そこで生活していくという話だ」

御影
 
「「ロビンソン・クルーソー」みたいやな」

フジモリ 「そう。ヴェルヌはロビンソン以降出た多くの亜流の「無人島もの」とは一味違う。まず、ロビンソンクルーソーと違い主人公たちが島に着いたとき持っていたのは懐中時計2つ、小麦一粒、マッチ一本、記者が持っていたノートとペン、それに犬の首輪だけだった。ロビンソンクルーソーは難破した船の物資を使って生活したわけだけど、それより状況はかなり過酷になっている」

御影 「・・・ほんまやな。そんなんで暮らしていけるん?」

フジモリ 「暮らしていけるんだ、それが。例えば、最初にマッチを使って起こした種火を消してしまったあと、合流した技師(主人公)、サイラス・スミスはとある方法でいとも簡単に火を起こしてしまう」

御影
 
「とある方法って?」

フジモリ 「それは、読んでのお楽しみだ。そのほかにも、スミスは持っている科学知識を使い、製鉄をし、陶器を作り、ガラスを作り、はてはニトログリセリンまで作ってしまう」

御影
 
「うそぉっ!?」

フジモリ 「その方法もヴェルヌの科学に対する深い造詣があってこそだ。ニトログリセリンを自然界にある物質から作ってしまう過程を読んで、やっぱりヴェルヌは凄い、と再確認したよ」

御影 「・・・過程を読むとゲームの「マリーのアトリエ」を思い起こさせるな」

フジモリ 
「そうだね。ロウをとって、とか、灰から出来る天然ソーダを使って、とか、ある物質を得るためにある物質を作るところなんかはそっくりだね。まあ、「マリーのアトリエ」の場合は錬金術だったんだけど、当時の人から見ればこういう自然界の物質を使ってまったく別の物質を作る、という過程が錬金術に見えたのかもね」

御影 「この作品って、SFなん?」

フジモリ 
「うーむ、無人島ものというシチュエーションだが、科学の知識を通じて架空の世界で物語をするところなんかはSFといえるね。ただ、この物語の芯は「友情もの」だな」

御影
 
「友情もの?」

フジモリ 「この5人、南北戦争でリンカーン軍で戦っていた人たちで、祖国に対し深い愛情を抱いている。5人はリーダーであるサイラス・スミスを中心にしっかりとまとまり、最後まで内部での諍いや裏切りが起きなかった。読む人によっては物足りないと思うかもしれないけど、もともと少年少女向けだし、これでいいと思う。途中「海賊」という敵は出てくるし、それによって団結がいっそう深まるという過程も素晴らしいね」

御影
 
「つまり、この作品はヴェルヌ十八番の「冒険もの」でもあるわけやな」

フジモリ 「そうだね。科学知識を用いてリアリティあふれるサバイバル劇を描いているし、その芯には主人公らの「友情」がある。冒険SFの王道と言って間違いない。やっぱ、ヴェルヌを読むと、心が若返るね」

御影 「この作品って「十五少年漂流記」より前に書かれたものなんよね」

フジモリ 
「ああ。ヴェルヌの「無人島もの」の元祖。そういう点でも意味のある作品だね」

御影 「ヴェルヌやったらみんな一度は読んだことあるんちゃうんかな」

フジモリ 
「だと思うよ。そうそう、言い忘れてたけど、この作品、「海底ニ万里」の続編でもあるんだ」

御影  「・・・うそぉっ!?」

フジモリ 「ほんとほんと。本の裏のあらすじにも書いてある。どう続編なのかは読んで確かめてもらうことにして、そういう動機から読んでもおもしろいかもね」

御影 「「海底ニ万里」かぁ・・・。そういや、子供の頃読んで、大学入ってからちゃんとした本で読みなおしたなぁ。覚えとぉ?」

フジモリ 
「多分」

御影
 
「・・・「多分」ってなんや?ほな、ネモ船長が潜水艦、ノーチラス号に乗せたフランス人の教授と召使、それにカナダ人漁師の名前は?」

フジモリ 
「それぐらい覚えてるよ。ジャンにナディアに・・・キングだろ?」

御影  「お前はアニソンコーナにでも飛んでろ!」



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