フジモリの脳内ラビリンス

〜a labyrinth in fujimori's brain〜

Ninth bookshelf(ネタバレ感想)
上遠野浩平『冥王と獣のダンス』


註!
今回の書評には内容に関するネタバレがあります。未読の方はご注意ください。


御影 
「さて、アイヨシに遅れること2ヶ月、ようやっとフジモリも読みました上遠野浩平(かどの・こうへいと読む)の「冥王と獣のダンス」。「ブギーポップ」シリーズでお馴染み、ゆーても、知らん人は知らんか。中高校生の間では人気の小説やねんけど、一風変わったファンタジィを書く人や。ん?ブギーポップはファンタジィちゃうって?フジモリの定義では、「フィクション小説のほとんどはファンタジィ」なんや。ま、ブギーポップシリーズは「Jミステリー」言われとるらしいけど」

フジモリ 
「・・・・・・」

御影 「なんやえらい無口やな。いつもならここでファンタジィについての薀蓄が入るはずなんに。ま、えーか。この作品は単発もんや。機械の国と魔法の国との戦争の中出遭った男女のラブストーリィや。読む人によって若干解釈がちゃうかもしれへんけど、だいたいそんなとこや」

フジモリ 「・・・・・・」

御影 「?、続けるで。主人公は機械の国の一兵士。異常に鋭い勘で、数々の危機を乗り越えてきた。ヤンウェンリーみたいなやつやな。その一兵士、トモルが戦場で出遭った奇蹟使いの少女、夢幻。その二人を軸にして、物語は展開されるわけや。この話には個性的な脇役がぎょーさんでてきよるし、敵同士の二人がどうなっていくのかという興味で、ぐいぐい引き込まれる。実際、フジモリも一日で読破しよったしな」

フジモリ 「・・・・・・」

御影 「どしたん?」

フジモリ 「しょーかふりょー」

御影 「?」

フジモリ 「消化不良だよ、これ」

御影 「なにをいきなり・・・。おもろなかったん?」

フジモリ 「面白かったよ。アイヨシは「ブギーポップシリーズを読んでるみたい」とか言ってたけど、フジモリはそうは思わなかったし、独立したファンタジィとして楽しめた。といっても、ブギーポップもこの作品もいわゆる「超能力もの」なんで、どうしても「ジョジョの奇妙な冒険」の呪縛から抜け出せないけどね」

御影 「ジョジョのおかげで古今東西あらゆる超能力のパターンは出尽くしとぉからなぁ」

フジモリ 「ジョジョにない超能力を出すには、強力過ぎるものか微弱過ぎるものしかない。微弱とは、たとえば「シャンプーの泡が目に染みない」程度の超能力」

御影 「それ超能力か?」

フジモリ 「強力とは、人間が手に負えるレベルを超えていること。その点、今作の奇蹟使いは一人一人が大陸間長距離弾道弾に匹敵する兵器級の能力なんで、まずまず楽しめた。戦闘シーンも、上遠野浩平作品らしく説明を加えながらも冗長にならない。テンポがよく、あっという間に読み終えられた」

御影 「んーで、なんで消化不良なん?」

フジモリ 「うーん。戦争を扱って、これだけ脇役が出てるのに、1巻完結っていうのは短すぎないか?せっかくの素材がもったいない。主人公の「能力」も中途半端に覚醒し、あっさり危機を乗り越えてしまう。それに、この能力を実際に戦闘にほとんど使わずに物語が終わってしまった。消化不良だよ、これじゃ」

御影 「なんや、マニアにありがちな「もっとこうなら良かったのに症候群」か」

フジモリ 「マニアって言うな。もし単発だったら、エンディングでトモルが死ぬのは後味が悪いし、消化不良の印象を読者に与えても仕方ないよ」

御影 「死んどるかわからんやろ?」

フジモリ 「確かに、明記はしていない。でも、トモルが意識を失った後の事後情勢説明文を読む限り、「トモルが生きていた場合こういう世界情勢はありえない」内容だった。未読の方は全くわからないと思うけど、もしトモルが生きていたら第3勢力の台頭について触れているはずだ。トモルを盟主とした、とまで明記されなくても、そういうニュアンスは書かれているはずだ。それが書かれていないんで、おそらくトモルは死んだんだろう」

御影 「別に死んでもえーやん。ヤンウェンリーやって死んだやろ?」

フジモリ 「あれは全10巻だったからね。「銀河英雄伝説」は大河小説であり、戦争の中での多くの人の死が物語の一つのテーマになっている。でも、今作は単発、1巻で終わり。これが何巻も続く中でのトモルの死だったら物語の必要部分として割り切ることが出きるし、逆に単発だったらラストは生き残る(あるいはそういうニュアンスの文がある)方がいい読後感を残してしっかり完結する。そういう意味では、すごいもったいない作品だったと思う」

御影 「なんか、この部屋始まって以来の辛口感想やね。なんかあったん?」

フジモリ 「いや別に。まあしいて言うなら、北村薫の爽やかな読後感の小説を読んだ後だから、よけい後味の悪さを感じるんだろうな。あえて例えるならハッカを食べた後にオレンジジュースを飲んだようなものだ」

御影 「うわ、まず」

フジモリ 「だからと言ってこの作品が面白くなかったわけじゃない。面白くなかったら、この部屋には置かないからね(感想を書かないということ)。画竜点睛、玉に瑕、白璧の微瑕。それが、今回の感想かな」

御影 「・・・(なにやら考えている)」

フジモリ 「今回はちょっと辛口の感想になったけど、読んで損はないことは事実。この話に限らず、上遠野浩平の作品は少年少女が世界の運命に携わり、戦っている話が多い。少年少女向けライトノベルズの新旗手といっても過言ではない。興味があったら他の作品も読んでみてほしいな」

御影 「この作品に限らずなぁ」

フジモリ 「ん?」

御影 「この作者、虚無的な少女が出てくる恋愛もの、多いと思うねんけど」

フジモリ 「綾波系か?」

御影 「(ゆーと思った)ぶぶー。あんたの負け」

フジモリ 「なにぃっ!?」



TOPページにもどる