| フジモリの脳内ラビリンス
〜a labyrinth in fujimori's brain〜 Fourth bookshelf 森博嗣『魔剣天翔』 |
フジモリ 「さて、この本棚も結構本が増えてきたな。今回紹介するのは、森博嗣の『魔剣天翔』だ。今回もネタバレなしでいきたい。ぎりぎりのところで」 御影 「ぎりぎりかいっ!(笑)せやけど、ミステリィって感想に困るわな。どこまでがネタバレか難しい」 フジモリ 「そうなんだよ。殺人なのか、自殺なのかが重要な物語では、あらすじに「死んでいた」とか苦肉の策で書いてたりするけど、森博嗣の作品、特にVシリーズではすべてがネタバレになってしまうからね。保呂草と紅子の仲が進展した、とかいうのもネタバレだからね。まあ無理だったらあきらめよう。この話は、瀬在丸紅子という旧家の令嬢(29歳)が探偵役のVシリーズとよばれる長編の5話目だ。航空ショーで2人乗りの航空機で、後部座席に座っていたパイロットが後ろから撃たれて殺されていた。前に乗っていたのは保呂草にとある「仕事」を頼んだ依頼人。この空中密室の謎を軸に、おなじみの登場人物たちが活躍する」 御影 「このシリーズの特徴は、謎解きがメインでなない、ちゅうことやな」 フジモリ 「そう。実際、犯人やトリックなんかについては紅子以外にも保呂草、林、場合によっては練無や祖父江なんかも気付いている。このシリーズは、頭のいい人がそろっている、ということも特徴だね」 御影 「今回は、練無くんがキーパーソンやね」 フジモリ 「うん。短編「ぶるぶる人形にうってつけの夜」でもトリックに気付いてたし、探偵の素質はある。推理ものでよくある「間違った推理役」であることは確かなんだが、この間違った推理がすでに「これを正解のトリックにしてもおかしくない」ぐらいのものだ。バカがいないぶん、この話って凄いスマートになっている。ま、犀川&萌絵シリーズもそうなんだけど」 御影 「Vシリーズは、キャラクターに焦点を当てて書いとぉよね」 フジモリ 「そう。魅力的なキャラクターがいっぱい出てくる。犀川&萌絵シリーズがあくまで二人を軸に書いていたのに対し、Vシリーズでは多種多様なキャラクターがそれぞれ主役となる場面が存在するんだ」 御影 「フジモリは、誰が好きなん?」 フジモリ 「保呂草だな。『魔剣天翔』では主役級の活躍をしたんで、うれしかった。まあ、一度だまされた経験があるだけに・・・(げふんげふん)」 御影 「ぎりぎりやな。イエローカード。あとは、登場人物たちの恋愛もこのシリーズの軸やな」 フジモリ 「うむ。犀川&萌絵シリーズの書評でも書いたけど、Vシリーズは犀川&萌絵シリーズ以上に恋愛模様について書かれている。誰が誰とくっつくのか?なんて考えながら読んでも面白いね」 御影 「あと、森博嗣の作品の特徴として、人がほとんど死なへんな」 フジモリ 「一人か二人。多くて三人。多く殺されると、ごちゃごちゃしてしまうからね。トリック、殺人などはすごくシンプルに、スマートに書かれている。だから、このシリーズは素直に恋愛ものとして読んでほしいね(笑)」 御影 「そういえば、アイヨシがこのシリーズはどういう風なエンディングを迎えるんでしょう?とか言っとったね」 フジモリ 「アイヨシも言ってたけど、このシリーズ、おそらく今より30年ぐらい前の時代設定なんだと思う。なんでなのかは、「へっくん」の本名と非常に深いつながりがあると思うよ」 御影 「なんで?」 フジモリ 「フジモリは、「へっくん」が誰なのか予想している。ただ、森博嗣のことだから、それをにおわすだけで結局本名を明かさない、なんてことも考えられるけど」 御影 「うわ。めっちゃありそう」 フジモリ 「それと、短編「ぶるぶる人形にうってつけの夜」で、練無は西之園にN大内で会っているんだ。これも、このシリーズの時代設定の推論を裏付けている」 御影 「なんで?」 フジモリ 「(以下、ネタバレなので伏せます。見たい人は左クリック&ペーストで反転させてください) 練無が相手の名字が西之園だと聞いても、学長の名前だと思い浮かばなかった。すなわち、この「西之園」は「西之園萌絵」ではなくて、「西之園睦子」なのではないかということだ」 御影 「見えんわっ!もう、やめ、やめ!とにかく、Vシリーズはミステリィ部分はもちろんしっかりしとぉけど、メインは登場人物が織り成す物語部分や、っちゅうことやな」 フジモリ 「強引にまとめたね。ま、ミステリィに興味ない人でも読めるし、このシリーズから森ミステリィに入門してもいいってことだ」 御影 「そういえば、この話、暗号文があったんやんね。分かった?」 フジモリ 「最後の紅子の話でね。それよりも、ざるそばの方が難しかった(笑)」 |